最初と最後に繰り返された二回の"ブレーメン"と、満場の客席が微動だにしない"ワールズエンド・スーパーノヴァ"。印象的な三つの場面を思い返して、2007年のくるりが鳴らそうとしていたものはなんだったのかと、あれこれ考えを巡らせる帰り道。12月11日のパシフィコ横浜・国立大ホールは素晴らしい空間でした。
「ワルツを踊れ」のレコーディングにも参加した、ウィーン・アンバサデー・オーケストラを招いてのふれあいコンサートファイナル。ドラムはあらきゆうこ嬢、ギターは山弦の作橋佳幸氏。コーラス+パーカッションを担当するサスペンターズ・カスタムは、アコーディオンまで持ち出す芸達者ぶり。カミテにバンド、センターからシモテにかけてオケ、シモテぎりぎりにサスペンターズ。音量のまったく違う楽器の音色を拾うために、セクションごとにアクリル板でブロッキングされ、弦楽器はいくつか立てられたマイクのほかにクリップ式のピックアップも。

第一部は、今思えば緊張感と手探りの感覚に満たされたステージだった。咳ひとつさえ憚られるような、張りつめた空間で耳を澄ます。生の"ハイリゲンシュタット"には鳥肌が立つようだったし、「ふれあいコンサート」仕様にざっくりと作り替えられた曲が、弦の響きで再びふくらみを取り戻しているのもよかった。"春風"のイントロには思わず声を上げそうになったし。15分の休憩時間には「もっと弦が聞こえてもいいような気がするけど、クラシックのコンサート見に来てるわけじゃないんだしね」なんて呑気な感想を述べ合っていたのだ。

そんな「ほどほどの満足」は第二部で見事に打ち砕かれた。第1部では「ワルツを踊れ」の楽曲が中心だったけれど、第二部では新旧取り混ぜたセット。"グッドモーニング" や "アマデウス" のように元から弦の入った曲もあれば、"惑星づくり"を打ち込みとサンプリングと生音で再構築してみたり。アンプリファイされた音と対等に、時に喰わんばかりの荒々しさで渡り合う弦楽の響きに圧倒される。ていうか、あの弦の伸びやかさ、絶対PAのセッティングそのものが変わってたはず。

ようやく口を開いたと思ったら「今日は完全着席でお願いしてるんで、立ったりするとまわりのSPに撃たれますから。死なないように気をつけて」とうそぶく岸田。その後に"アナーキー・イン・ザ・ムジーク"って性悪にもほどがあると思ったけど、"ワールズエンド・スーパーノヴァ"まで演られると、なんだかよくわからなくなってくる。聴かせたいの?踊らせたいの?見せたいの?


ステージ上の全てのメンバーを丁寧に紹介しつつ、予定通りのアンコールが終わり、満場のスタンディング・オベイション。指揮者が去り、メンバーが去ってもなぜかぐずぐずしているオケたち。はけるタイミングをつかみ損ねているのかなあと思ったら、もう一度メンバーが登場して、ステージ前方に全員が集合して深々とお辞儀をする。うん、いいエンディングだね、と思いきや、やっぱりぐずぐずしている。岸田とコンマスがなにやらごにょごにょ相談をして、袖に走って、サスペンダーズに指示をして、もう一度全員が位置に付く!「ほんま、もう持ちネタないんですけど、この曲やりたいってリクエストもあるんで。初めて聴くような心で聴いてください」

そうして奏でられた"ブレーメン"は、本当にほんとうに素晴らしかった。冒頭の"ブレーメン"も「これ聴けただけでもう帰ってもいい」と言わしめる程によかったのだ。だけど、音楽はステージ上だけで奏でられるものではない。間奏で自然と沸き起こる歓声と拍手、ステージのあちらもこちらも満面の笑顔。5000人の観客が、椅子に沈み込んで固唾をのんで見守るよりも、ゆらゆら揺れながら、くちづさみながら聴かれるほうが、ずっとこの曲には似合っている。ああ、そっか。そういうことか。

「クラシックだから」「ロックだから」「トラディショナルだから」「ダンスミュージックだから」そういったみなしとか、カテゴライズなんてどうでもいい。音楽はもっと寛容で、どんなふうにでも奏でられる。くるりの近作はずっとこういう意識に基づいて作られていたんだった。パンフレットによれば、このオーケストラも「伝統に縛られない」ことを主眼に結成されたらしい。「ロックバンドのライヴはスタンディングである」ことさえ定型化しつつある今だけど、指揮者がタクトを振りながら片足で8ビートを刻んだっていいのだし、ローディが蝶タイまでした正装だってかまわない(流石に動きづらそうだったけどね)。えらく逆説的ではあるけれど、じっくりと腰を落ち着けた2時間のライヴのあとにそんな事を思った。そう、「ライブステージは世界のどこだって」なんだ。
第一部:ハイリゲンシュタット / ブレーメン / GUILTY / 恋人の時計 / スラヴ / コンチネンタル / 春風 / さよなら春の日
第二部:グッドモーニング / 惑星づくり / ARMY / アマデウス / 家出娘 / アナーキー・イン・ザ・ムジーク / 飴色の部屋 / WORLD'S END SUPER NOVA / ジュビリー
アンコール:ハローグッバイ / 言葉は三角 心は四角 / ブレーメン

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や、僕は行ってないんですけど、観にいった友人が「すんごい良かった!」て言ってるし、いろんなとこで感想見ても絶賛の嵐。来年2月にCS TBSチャンネルで放送するようなので、それを楽しみにしてます。 Tomorrow’s Song | くるり / ふれあいコンサートファイナル day1
  • スキャターブレイン
  • 2007/12/13 4:48 PM

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