ボブ・ディラン、ニール・ヤングに代表される70年代のロックに深い敬意と愛情をもち、かつては和製ボブ・ディランなんて称される事もあった佐野元春が、先日ごく少数の参加者を対象にしたブロガーミーティングを行ったとの事(via Natalie - 佐野元春 ネット時代の音楽ビジネスを語る)。
彼はインターネット黎明期である1995年から自らのホームページを開設し、2001年の同時多発テロのわずか2日にはいわゆる「オトナの事情」をすべて無視して、優しい祈りの歌をつくり、うたい、多くの人に届けるためにフリーでダウンロード配布した。ブロードバンド環境が今とは比べ物にならないほど貧弱だった当時において、1週間で10万件ものアクセスを記録したとのこと。当時の彼の契約レーベルは、今でもDRMに対してもっとも保守的なSony。その後の確執は相当のものだったろう。
その後もCCCDに対する疑問からSonyを離脱→自らのレーベルを立ち上げ、現在は「権利関係やプロモーションはすべて自分たちでやる独立した存在だけど、流通だけはメジャーレーベルであるユニバーサルと組む」という形態でリリースを行っている。
レコードビジネスはロックンロール音楽に恩恵を受けている。ロックンロール音楽を愛するリスナーにベネフィットを落としていくということを最優先で考えなければならない。しかしCCCDはどうだろうか。まるで大人向けの論理だ。音楽を、楽しいロックンロールを売る側がおまえのことを信じてないよ、と言う。その関係の中で流通される音楽はクールなのだろうか、と自問自答して「違うな」と思った。
彼の立ち位置はとても明解。音楽とそれを愛する人たちを一番に考えて行動しているだけ。そのための軋轢や批判はかわすことなくきちんとうけとめる。IN RAINBOWSの一件以降、海外ではどんどんこれに追従した(あるいは自分たちなりのやり方の)音楽配信の形が発表されているけれど、日本にもずっと前から作り手とリスナーの間に立ちはだかる大きな存在に立ち向かう、無骨なまでに筋の通ったヒーローがちゃんといたのだ。
今日の1曲はフリーダウンロードから4年ののち、iTunes Music Storeの日本版オープンと同時にリリースされたフルバージョンの「光」を。フリーではなくなったけれど、販売の収益はすべてアフガン支援のために寄付されるそう。こちらも、ぶれがない。
■ 光 : The Light 特設ページ
■ 佐野元春 オフィシャルファンサイト
全発表曲の試聴・歌詞・コード譜までも。よい公式サイトの見本です。
- 2007.11.09 Friday
- iTS
- 00:04
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- by eri